ノートパソコンの横のメモに、依頼する内容を箇条書きで整理している若手社員

1よくあるつまずき

  • 思いついた順に条件を書き足していき、依頼文は長いのに要点がぼやける
  • 「簡潔に」と「詳しく」のように、矛盾する条件が一つの依頼文に同居している
  • 前提を最後に書いたため、AIが途中まで別の方向で答えを組み立ててしまう

「プロンプト集」の型を借りても、この問題は解決しません。型に入れる情報が整理されていなければ、結果は変わらないからです。

2考え方

依頼文は、人に仕事を頼むときと同じ構造

AIへの依頼は、人に仕事を頼むときと同じです。何のための仕事で、何を前提にして、何を、どんな形で返してほしいのか。この順番で伝えると、相手は迷わずに作業を始められます。VASEメソッドでは、情報を順序と関係に沿って組み立てる力を構造化する力と呼んでいます。

依頼文の4つのブロック

  1. 目的:この依頼の結果を何に使うのか
  2. 前提:相手、状況、すでに決まっていること
  3. 依頼内容:やってほしい作業を一つに絞って書く
  4. 出力の形:分量、形式、トーン、避けたいこと

いちばん効くのは「話を絞る」こと

依頼内容が二つ以上あると、AIはどちらも中途半端に仕上げがちです。作業が複数あるなら、依頼を分けるか、優先順位を書きます。何を書くかより、何を書かないかを決める方が、依頼文の質は上がります。

3演習

所要時間の目安:10分

次の依頼文は、条件はそろっていますが、順番がばらばらです。4つのブロックに沿って並べ替え、矛盾している部分も直してください。

お客様向けのお詫びメールを書いてください。丁寧すぎない感じで。納品が3日遅れます。原因は部品の入荷遅れです。できれば簡潔に、でも経緯はしっかり説明してください。相手は長年の取引先の購買担当の方です。次回以降の対策も入れたいです。社内の上司にも同じ内容で報告したいので、そちらもお願いします。
解答例と解説を見る

並べ替えの例です。

  1. 目的:納品遅れをお詫びし、取引先との関係を損なわないようにする
  2. 前提:相手は長年の取引先の購買担当者。納品が3日遅れる。原因は部品の入荷遅れ
  3. 依頼内容:お客様向けのお詫びメールの文面を作る
  4. 出力の形:経緯は2〜3文で要点だけ。次回以降の対策を1つ入れる。かしこまりすぎず、誠実なトーン

依頼文にすると、次のようになります。

長年お取引のある企業の購買担当者に送る、お詫びメールの文面を作ってください。納品が3日遅れることになり、原因は部品の入荷遅れです。関係を損なわないことが目的です。経緯は2〜3文で要点だけを書き、次回以降の対策を1つ入れてください。かしこまりすぎず、誠実なトーンでお願いします。

解説

元の依頼文の「簡潔に、でも経緯はしっかり」は、どちらを優先するかが決まっていません。「経緯は2〜3文で要点だけ」と具体的にすると、矛盾が解けます。

もう一つは、上司への報告を別の依頼に分けたことです。お客様へのお詫びと社内への報告は、読み手も目的も違います。一つの依頼文にまとめると、どちらの文面もぼやけます。

4今日から試す実践ポイント

  • 依頼文を書いたら、送る前に4つのブロックのどれが欠けているかを確かめる
  • 「簡潔に」「しっかり」のような言葉は、文字数や文の数に置き換える
  • 作業が二つ以上あるときは、依頼を分ける

この組み立て方は、部下への指示メールや、外注先への依頼書にもそのまま使えます。

IN TRAINING

研修では、この先まで深めます

ここで取り組んだのは、「構造化する力」を鍛える演習のひとつです。研修では、同じ考え方を使って、受講者の実際の仕事に近い形で練習を重ねます。

  • 題材は、貴社の実務

    実際の報告書や会議資料、顧客とのやりとりを題材にして演習します。明日からの仕事にそのまま持ち帰れます。

  • 講師が一人ひとりにフィードバック

    自分では気づきにくい言葉のクセを、その場で指摘し、言い直しながら身につけます。

  • VASE診断で変化を確かめる

    研修の前後に64問の診断を行い、4つの力の変化を数値で確かめます。教育担当者の方には組織インサイトレポートをお渡しします。